スマートシティ 関連コラム

2012年7月23日

好調のカーシェアに迫る伏兵、欧州で台頭の「ライドシェア」とは

筆者:金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所
出典:日本経済新聞電子版「クリーンテック最前線」 6月27日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 新興国の所得水準が上がってクルマの所有意欲が高まる一方で、モータリゼーションが進んで成熟した先進国では「所有しない使い方」へのシフトが急速に進みつつある。消費者や企業は、自らの利用方法に合わせてリース、レンタル、シェアリングといった形態をうまく使い分けるようになった。

 中でも今、急成長しているのがカーシェアリングである。交通エコロジー・モビリティ財団が2012年6月22日に公表した調査結果によると、日本国内のカーシェアリングの会員数は19万511人、車両台数は6988台、車両ステーション数は4565カ所に達した(図1)。2010年から倍々ゲームで伸び始め、その勢いは止まる気配を見せない。2011年末の会員数と車両台数はそれぞれ7万3224人、3911台だったので、2012年も会員数で3倍以上、台数で2倍以上に増えるのは間違いない状況だ。

我が国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移(資料:交通エコロジー・モビリティ財団)

ガリバーが撤退を表明

タイムズ24の「タイムズプラス」の提供例

オリックス自動車の「オリックスカーシェア」の提供例

 そんな成長市場にあって、ガリバーインターナショナルは2012年5月、カーシェアリング市場からの撤退を表明した。同社は2009年4月にカーシェアリング市場に参入。「ガリバー・カーシェアメイト」というサービス名称で、2012年1月までに車両ステーション10カ所に車両10台を配備し、会員数は144人になっていた。しかし2012年7月31日にサービスを終了し、希望する会員には他社を紹介するという。

 国内のカーシェアリング業界では、今後、徐々に参入企業の淘汰が進むとの見方が強まっている。前出の交通エコロジー・モビリティ財団の調べでは、カーシェアリング事業を営むのは34企業・団体。シェアトップはタイムズ24の「タイムズプラス」で、ステーション数2509カ所、車両3458台、会員数8万5350人。2番手はオリックス自動車の「オリックスカーシェア」で、同1025カ所、1641台、7万3364人。この2社で会員数の83%を押さえるという寡占市場になっている(写真1、写真2)。

 オリックス自動車は2002年からカーシェアリングに取り組んでいる老舗で、日本の同市場を切り開いてきた。タイムズ24は、2005年にカーシェアリング事業に参入し、本業の駐車場を車両ステーションに併用できる強みを生かし、急速にシェアを伸ばしてきた。この2社の成長ぶりを見て、2008年以降、新規参入が相次いだ。ガリバーインターナショナルもその1社だった。今後、こうした後発組を中心に撤退が増える可能性がある。

 いきなり大規模な投資が必要な鉄道や路線バスと違い、カーシェアリング事業は会員数の増加に伴って徐々に車両数を増やせるので、事業リスクは比較的小さいように思える。しかし実はそうでもない。意外に投資額が大きいのは、車両や会員を管理する情報通信システムだ。

 カーシェアリングが事業として先進各国で普及したのは、車両の予約や会員認証、車両のドアロックの開閉などをすべてオンラインで遠隔管理できるようになったからだ。一般的なレンタカーと違い、車両の貸し出しや返却はすべて無人で行われる。短時間の利用も多いカーシェアリングの場合、現場にいちいち社員を配置していては運営コストが膨らんでしまう。

 こうした車両管理システムへの投資は、会員数や車両台数の多寡によらず一定の規模が必要になる。つまり会員数が少ないうちは、システム投資の減価償却費が大きく利益が出にくいが、そこを我慢して一定規模を超えて大きくなれば利益が出てくるという構造である。タイムズ24を傘下に持つパーク24でさえ、カーシェアリング事業の収益性はまだ低く、2012年10月期にようやく部門収支が均衡する見込みだ。

 車両の購入や車両ステーションの確保にかかるコストも、規模が大きいほど有利になるのは自明だろう。例えばオリックス自動車は、本業の自動車リースと合わせることで車両購入台数を増やすことができた。価格交渉力が強まるので1台当たりの購入単価を下げやすい。

 世界のカーシェアリング市場を見ても、米ジップカー社が会員数36万人、スイス・モビリティー社が同約10万人を擁するなど、寡占化が進んでいる。その背景には、こうした事業構造も一因になっている。

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