スマートシティ 関連コラム

2012年8月28日

【そもそもから考えるエネルギー論】
「原発はダメ、自然エネ拡大まで天然ガス」では解決しない

大場 紀章
出典:日経ビジネスオンライン 2012年2月28日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 現在、経済産業省総合資源エネルギー調査会「基本問題委員会」では、原発事故を受けて「エネルギー基本計画」を白紙からの見直す議論を進めています。そこでも将来の石油供給リスクについては全くと言っていいほど語られていません。それどころか、エネルギー安定供給のために石油消費を増やすべきだとの意見すら出ており、私は大変、驚きました。

影響の大きさは「脱原発」の比ではない

 まず重要なのは、ピークオイル問題は、単なる「エネルギー問題というよりも液体燃料問題である」ということです。図1で見たように、石油の多くは輸送用燃料、つまり自動車やトラックに使われています。特にトラック輸送に強く依存する物流は、産業の血液とも呼べるものですが、ハイブリッド車や電気自動車での代替が困難であり深刻な影響を受けます。鉄道輸送に移行しようにも、現在の鉄道インフラキャパシティのおよそ10倍が必要になります。そして、自動車の利便性が下がることは、すなわち日本の基幹産業の一つである自動車産業の衰退でもあります。

 加えて、日本では欧米と異なり天然ガスをLNG(液化天然ガス)として石油価格とリンクした価格で購入しているため、石油価格の上昇がダイレクトに天然ガスコストにも影響します。

 このままいけば、ピークオイル後の日本は物流と産業に深刻なダメージを受け、労働人口減少の効果も加わって、不可避なマイナス成長の世界に突入してしまうことになるでしょう。

 世界を見ても大きな変化が起きると考えられます。産油国は、ますます自国内向けの供給を重視し、輸出の割合を制限しようとします。産油国は、(軍事的)友好関係を結んでいる国に対してのみ、有利な条件で供給するかもしれません。つまり、国家資本主義(国家が政治体制の維持の為に資本主義を利用する)、保護貿易、経済のブロック化への道です。エネルギー資源供給の制約を背景に、世界の資本主義経済は新しいステージに突入するかに見えます。図3で、英国の石油価格「Brent」と米国の石油価格「WTI」が近年分裂し始めていることは、経済ブロック化の予兆かもしれません。

 現在、「原発はダメで、自然エネルギーの開発には時間がかかるから、天然ガス発電を増やす」という選択肢が最も現実的であるかのように語られています。それは“かなり”正しいのですが、既に述べたように今後はLNG価格も石油価格とともにどんどん上がるという現実を考慮する必要があります。日本にはもう、「原子力にシフトして、少しでも輸送部門を電化する」ぐらいしか有効な道は残って“いなかった”のです。

 この連載では、ともすると忘れられがちな、石油、天然ガス、そして石炭といった化石燃料を中心に取り上げ、将来のエネルギーを考えるうえでの最も基本的な前提について解説していきたいと思っています。また、最近話題になることも増えてきた「シェールガス」や「シェールオイル」、「メタンハイドレート」といった非在来型化石資源と呼ばれるものも取り上げていきます。

 そしてその内容は、読者の方々が想像される以上に暗い未来を示さざるを得ないことになりそうです。特に日本は、エネルギーのほぼすべてが輸入依存であるのに加え、原発の運用に致命的な課題を抱えており、諸外国に増して厳しい立場に立たされています。これに人口減少や財政問題など、内部の根本的マイナス要因が加わります。

 なかなか明るい未来を描きづらい状況ですが、そもそも私たちが本当に守らなければならないことは何だったのかを問い直しながら、皆さんと一緒に日本のエネルギーのこれからについて考えていけたらと思います。

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