スマートシティ 関連コラム

2012年9月11日

【そもそもから考えるエネルギー論】
シェールガスに期待し過ぎてはいけない

大場 紀章
出典:日経ビジネスオンライン 2012年3月26日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

米国エネルギー省は資源量見積もりを4割下方修正

 また、米国エネルギー省(DoE)による米国のシェールガス資源量見積もりは、2010年から2011年にかけて2.4倍に増えましたが、2012年は逆に4割以上下方修正されています(図3)。これも、事前の過剰な期待による見積りが、実際に開発が進むにつれ現実が明らかになり、修正されたことを示しています。

図3:DoEの米シェールガス資源量見積もり

 需要面にも懸念があります。米国では2020年までに老朽化した石炭火力発電所の約12%が停止することになっていますが、環境規制によってその多くが天然ガス火力に置き換えられることになっています。2020年までに新設されるガス火力発電所によるガス需要の増加量は、年間1.6~3.5tcf(兆立方フィート)と予測されています<注>。これは、現在の年間消費量の7~16%に相当します。
<注>ICF Internationalは年間1.6~2tcf、デロイトは3.5tcf、ドイツ銀行は3tcfと予測

 それでも、DoEは今年発表の最新のエネルギー見通しで前年までの輸入見通しを一変させ、北米全体の天然ガスは2016年から純輸出に転じるとしています。一方、英国のオックスフォードエネルギー研究所が1月に発表した報告書では、米国のガス生産量やアジアのガス需要の高低により4つのシナリオを設定し、北米の天然ガス輸出入の見通しを試算しています。その4つのシナリオのうち3つでは全期間で純輸入となり、唯一LNG輸出があるシナリオでも輸出は数年間だけで再び輸入に転じてしまいます(図4)。

図4:各機関による北米天然ガスのネット輸出入見通し

 LNG輸出事業モデル自体にも懸念があります。既に述べたように、今挙がっているLNG輸出案件は、元はLNG輸入に失敗した事業者の生き残りを賭けた経営多角化であり、事業者自体はガス生産者ではありません。そのため、事業者は基地使用料と液化コストを取るだけのビジネスで利幅が狭く、さらに地域間の価格差だけに依存しているという非常にハイリスクなビジネスモデルです。

 例えば、Sabine Passの案件では、北米ガス価格(1MMBtu当たり2.3ドル)の15%の基地使用料に固定の液化コスト3ドル、それに輸送費、保険費を加えると購入価格は約9ドルとなります。確かに日本の現在のLNG輸入価格である約16ドルと比べて安いですが、昨今の価格変動を考えるといつ差がなくなってもおかしくありません(図1)。おまけに、公共の利益に反すると判断されれば、政府から輸出許可の取り消しもあり得るという政治リスクもあります。こうした理由から、大手ガス企業はLNG輸出事業には参入する気配もなく、米国の投資銀行も投資に慎重な姿勢をみせています。

 このように、米国からのLNG輸出が必ずしも持続的と考えられてはいないことが分かります。

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