スマートシティ 関連コラム

2012年9月13日

【クラウドが支えるスマートシティ】“マイテクノロジー”が社会を変える

大西 公平(慶應義塾大学教授)/下野 誠通(横浜国立大学助教)/名取 賢二(青山学院大学助教)
出典:ITpro Magazine 2010年秋号  pp.12-21
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

従来の科学技術は大量生産が前提

 資源の乏しい日本が、今後も豊かで影響力の大きい国家であるためには、科学技術を柱とする産業が国を支えていくしか道はない。富の源泉は製造業であり、そこに日本のほぼすべての産業が多少なり依存しているといえる。

 当然ながら産業振興は重要課題である。政府は10年前に「ものづくり基盤技術振興基本法」を公布している。(A)生産の拡大、(B)貿易の振興、(C)新産業の創出、(D)雇用の増大、に寄与し国民生活の向上に貢献するのが目的だ。

 しかしながら、ここ10年程の短い期間に、産業を取り巻く状況が大きく変わってきた。ものづくり基本法も現状には合わなくなっているのではないだろうか。例えば基本法で目指している(A)~(D)のうち、(C)と(D)については目立った効果がない。

 少品種大量生産方式は戦後、日本がたどった道である。それが今は、韓国および中国のモデルになっている。少品種大量の生産技術が富をもたらし、企業の生命線だった。そこに「最新の生産設備と相対的に安価な労働力があれば競争に勝ち抜ける」「その上に高品質を保証すれば鬼に金棒」といったものづくり神話が生まれた。これはすなわち、大量生産は市場により勝敗が決まり、テクノロジーの高低には依らないということになる。

新しいテクノロジーが開く未来

 しかし今、ものづくり神話は、極端に低価格な製品には通用しない。

 米国を見れば、マイクロソフトやシスコ、グーグルなど、1980年代に起業した会社が急速に伸びている。日本とは逆に(C)と(D)の効能が大きい。彼らは、結果的に大量生産あるいは日常品(コモディティ)に見えるものの、情報システムを構成する“環”において重要な部分を担っており、他の追随を許さない立場を確立している。市場に左右されるより、別種のテクノロジーの挑戦により勝敗が決まっている。

 ものづくり基本法の発想には、工業製品の大量生産が背景にあると思われる。しかし、最近のグーグルとマイクロソフトは、価格面(市場)よりもテクノロジー面で競っている。これは、情報システムを構成する環のテクノロジーを高度化する競争だ。生産技術の競争ではないことに、もっと着目する必要がある。

 従来の科学技術が、日本の産業を発展させ、我々の生活を物質的に豊かにしてきたことは事実である。だがそれは、公共的で社会的な目的である“少品種大量”生産に特化していた。その点で、極めて標準的で一元的な科学技術だったといえる(図2)。これに対しマイテクノロジーは、社会を構成する各個人の身体性や価値観に適合させた私的な技術を提供することで、個人の行為を物理的に支援するための技術だ。極めて独創的でテーラーメイド的な科学技術だといえる。

図2●「マイテクノロジー」の発展が、社会活動や個人の活動における新しい価値を創出するく

 このマイテクノロジーの概念を利用するとすれば、誰もが必要とするものを作るのではなく、個々に対して必要かつ高度なテクノロジーを提供することが重要になると考えられる。

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