スマートシティ 関連コラム

2012年9月25日

【そもそもから考えるエネルギー論】
サウジアラビアが石油輸入国になる日

大場 紀章
出典:日経ビジネスオンライン 2012年3月12日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 サウジアラビアが国内の石油消費を急増させている背景には、以下のような要因があると言われています。

  1. (1)
  2. 継続的な人口増加(人口増加率2.12%、イスラム教は避妊・堕胎が禁止、海外労働者移民の増加)
  3. (2)
  4. 高い経済成長率(2010年4.15%、2011年6.47%)
  5. (3)
  6. 生活の変化(自動車・エアコンの普及)
  7. (4)
  8. 安いエネルギー価格(ガソリン=約13円/リットル、軽油=約5.4円/リットル、発電用石油=2.7~4.3ドル/バレル)を背景にした浪費
  9. (5)
  10. 夏期の電力需要の急増に対する石油火力での対応
  11. (6)
  12. 多くの海水淡水化プラント
  13. (7)
  14. 産業政策としての石油化学工業振興

 特に近年は5番目の要因が大きいと言われています。エアコンの普及に伴う夏期の電力需要急増に対応するために、火力発電向けの石油消費が約3倍(2008年比)になり、全石油消費の2割を超えるようになりました。

国内消費が輸出を脅かす

 急増を続けるサウジアラビア国内の石油消費は石油生産量の4分の1にも及び、既に輸出を脅かす水準に達しています。

 昨年の7月、サウジアラビアの著名な投資会社Jadwa Investmentが衝撃的な報告書を発表しました。それによると、

  1. サウジアラビアの原油輸出量は2005年の7.5mbd(mbd: 百万バレル/日)から既に減少し始めている
  2. 国内石油消費量は2030年には6.5mbdまで増大し、原油輸出量は4.9mbdを下回る

としています。

 これをグラフにしたものが図3です。原油生産量が増加するのにもかかわらず、輸出量は減少してしまいます。

 この報告書では、原油生産量の予測としてIEA(国際エネルギー機関)のものを採用していますが、報告書のなかで「この生産量予想を上回ることは期待していない」とも言っています。今回はサウジアラビアの石油生産量についての細部には入りませんが、既に生産ピークを過ぎたという指摘も多くあることだけ付記しておきます。

図3 サウジアラビア石油統計とJadwa Investmentなどの予測
点線はJadwa Investmentの予測

 Jadwa Investment以外にも、サウジアラビア内外から同様の分析が出てきています。国営石油会社サウジアラムコのKhalid al Falih社長は、2010年頃にさまざま場所で「国内のエネルギー効率が改善できなければ、輸出能力は2028年までに3mbd減少するだろう」と述べています。

注:近年のサウジアラビアの石油生産には原油以外に約2mbd程度のNGL(Natural Gas liquid: 天然ガス液体)という天然ガス採掘に伴う液体成分が含まれます。通常「石油」とは、「原油」や精製された「石油製品」などを含む広い概念です。一方、Jadwa Investment の分析ではNGLを除いた「原油生産量」「原油輸出量」のみの議論をしています。そこで、この記事でも生産量および輸出量に関してはNGLを除いた「原油」のみを扱い、消費量に関しては石油製品を含む「石油」を念頭においています。実際にはNGLを含める方が現実に即しているのですが、データの引用における混乱を避けるためにこのように判断しました。その点を留意してください

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