スマートシティ 関連コラム

2012年9月25日

【そもそもから考えるエネルギー論】
サウジアラビアが石油輸入国になる日

大場 紀章
出典:日経ビジネスオンライン 2012年3月12日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 一方、OPECのサウジアラビア代表であるエコノミスト、Majedal Moneef氏(次期OPEC事務局長候補)は、2011年4月に「今後数年で輸出可能な原油量は10%前後失われるだろう」と発言しています。

 英国の由緒あるシンクタンク、王立国際問題研究所(通称チャタムハウス)は、2011年12月に発表した報告書の中で「2038年にはサウジアラビアは石油輸入国になる」と述べています。

 ほかにも、大手エネルギーコンサルタントのウッドマッケンジーや、ロシアの投資会社VTB Capitalも同様の分析を公表しています。

主たるエネルギー機関の分析には出てこない

 こうした話はあまり見聞きすることがありません。なぜなのでしょうか。

 日本で目にする主たるエネルギー統計や予想分析には、国際エネルギー機関(IEA)、米国エネルギー省(DoE)、BPなどの分析が使われることがほとんどです。しかし、ニューヨーク大学経済学部のDermot Gately教授らは、それらの主要機関の分析ではサウジアラビアの石油消費予測が“前代未聞なほど”低く設定されていると指摘しています。

 Gately教授によると、過去のサウジアラビアの経済成長と石油消費の関係から推測すると、2030年の石油消費量は7.2mbdと見積もられるのに対し、IEA(3.6mbd)、DoE(3.8mbd)、BP(3.8mbd)の予測はその半分に過ぎません。また、2030年の原油生産量に関してもDoE、BPが大きな生産増加を想定しています(図3)。

 このように、“主たるエネルギー機関”の分析では、国内消費量の予測も原油生産量の予測もかなり甘めに見積もられているため、サウジアラビアの原油輸出の将来は安泰ということになっています。その為、私たちが通常目にするのは、平和な予測ばかりになります。しかし、過去数年を見ただけでもそれらの機関の予測は毎年ことごとく外れ、厳しい方向に修正が重ねられています。権威ある機関だけでなく、より現場に近い声やセカンドオピニオンにも耳を傾けるべきではないでしょうか。

2014年には財政赤字になるとの予想も

 次にポイントとなることは、サウジアラビア政府の財政事情です。サウジアラビアなどの多くの産油国では、石油の輸出によって経済が成り立っているため、その国家財政も自動的に石油に依存しています。

 サウジアラビアでは、国民の不満を解消するために、石油で得た莫大な収入をエネルギーや水などに対する補助金という形で分配しています。ガソリンや電気は著しく安く設定されているため、浪費が進みます。水は電力を使って海水を淡水化して供給(住宅用の約6割、工業用のほぼすべて)しているため、安い水の浪費は即ち電気の浪費につながっています。

 すると、補助金額は膨らんでいく一方、輸出量は圧迫され歳入は減少するという悪循環に陥ってしまいます。石油価格の上昇によって生み出された構造が、さらに高い石油価格を必要とさせてしまうのです。

 既述のJadwa Investmentの報告書では、今後図3の予想通りに推移すると仮定すると、サウジアラビア政府が財政赤字を防ぐために必要な石油価格は2020年頃から急激に上昇し、2030年時点で1バレル321.7ドルという価格が必要になると試算しています。ただし、これは現実的なシナリオではなく、実際には2014年に財政赤字化することになるだろうと予想しています。

一覧へ戻る

メディアパートナー

  • FT
  • Bloomberg Businessweek
  • 人民網
  • 能源網
  • 環球雑誌社(新華社)
  • 瞭望周刊社(新華社)
  • サイゴンタイムズ

Platinumスポンサー

Goldスポンサー

Silverスポンサー

Bronzeスポンサー