スマートシティ 関連コラム

2012年10月9日

【そもそもから考えるエネルギー論】
止まらない燃料調達コストの高騰

大場 紀章
出典:日経ビジネスオンライン 2012年5月28日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 しかし、四の五の言う前に、LNGは今後さらに必要となることは間違いないのです。いかに安い天然ガスを安定的に手に入れるかが、今後数年間の日本にとって死活的に重要となります。

 シェールガスがあるから大丈夫という方がいますが、米国からの輸入に関しては前回書いた状況に加え、鳩山元首相(民主党外交担当最高顧問)のイラン訪問が日米関係に与える悪影響を考えると非常に頭の痛い状況です。カナダからのシェールガス輸入は、今のLNG輸入価格と同様の契約形態がベースなので、供給先の多角化以外の意味では価格を下げる効果は直接は期待できません。いずれにしても、今年の夏には間に合いません。

 そして、覚悟しなければならないのが、産業に与える影響です。

電気代を上げない代わりに雇用を失う最悪のシナリオ

 現在の石油価格の高騰は、日本の消費者にとって若干見えにくくなっている状況にあります。1つの理由は円高(欧米の金融緩和によるユーロ安、ドル安)です。欧米に比べ強い円建ての石油価格は緩和されています。一方、ユーロ建てやポンド建てでは、2008年の1バレル当たり147ドルの水準を超えており、英国では“fuel poverty(燃料貧困)”と言って、光熱費の負担増が社会問題になっています。

 2つ目の理由は価格転嫁のタイムラグです。確かに、ガソリン価格や軽油価格は上昇していますが、第一次石油ショックのように1年で20%も消費者物価が上がるようなことはなく、エネルギーや生鮮食品を除いた消費者物価にはまだほとんど価格転嫁されないでいます。しかし、価格転嫁にタイムラグがある間は誰かがどこかで負担を強いられているわけです。例えば石油コストのウェイトが大きな運送業では運賃になかなかコスト転嫁できず、企業努力によって賄われている場合が多いと聞きます。

 日本の長期化するデフレの原因は、時期や見方によって様々で、コンセンサスの取れた説明はないように思われます。1つの興味深い見方として石油などの化石燃料価格の上昇にその原因を求めるというものがあります。つまり、製造業大手は2004年から2008年の石油などの価格上昇によるコスト増分を、規制緩和された非正規雇用の拡大による人件費の抑制で相殺して、企業の競争力と利益率を維持した。そうして発生した平均所得の下落が時間をおいて消費者物価の下落を招き、デフレが進行した、という考え方です。企業業績が回復し景気が良くなっていると言われても、生活者にその実感がなかったと言われていたこととも一致します。

 この見方が正しいとすると、現在の石油価格高騰も、消費者物価に転嫁されていない分は中間財を担う立場の弱い企業の賃金の押し下げにしわ寄せがいっていることになります。

 現在、電力会社の電力料金の値上げを小口需要家は拒否できるという話題があります。電力会社側の対応にも問題がありましたし、値上げの拒否は一見消費者にとって良さそうな話ですが、もしその動きが広がった場合、製造業などの大口需要家に電力料金値上げのしわ寄せがいくことになります。それらの企業では経営を維持するためにさらなる賃金の削減努力をするか、それができなければ企業の競争力の低下を招き付加価値を生み出せなくなりかねません。その結果、家の電気代上昇を防いだ代わりに所得や雇用を失うという最悪のシナリオになってしまうかもしれません。

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