スマートシティ 関連コラム

2012年10月9日

【そもそもから考えるエネルギー論】
止まらない燃料調達コストの高騰

大場 紀章
出典:日経ビジネスオンライン 2012年5月28日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 必ずしも製造業に固執する必要はありませんが、現時点で最も生産波及効果が大きく雇用を生み出している製造業をただ失っていくことになれば、日本にとって大きな痛みとなるでしょう。製造業は時代遅れという風潮がありますが、私は日本のものづくり産業の底力はまだまだ目を見張るものがあると感じています。

 2011年は日本は31年ぶりの貿易赤字となりました。そう聞くと、製造業の輸出不振を想像されるかもしれませんが、これだけの円高にも関わらずドル建て輸出額では2008年の水準を上回っており、かなり健闘しているといえます。一方で、(こちらも円高にも関わらず)エネルギー購入価格の上昇分が大きすぎて、ドル建て輸入額が急増しています。2011年は初めて年平均の石油価格が1バレル当たり100ドルを超えた年でもありました。

 話題になった家電メーカーの赤字決算はどの国でも不振だったテレビ事業の損切りの面があり、短期的な現象と見ることもできます。つまり、昨年の貿易赤字は製造業の輸出不振というよりも、石油価格高騰でそのほとんどが説明できるのです。

 しかし、困ったことに現在は円高に振れていた為替が徐々に円安傾向にあります。円安は日本にとって良いことだという思い込みがありますが、それは貿易黒字の場合であって、貿易赤字の時は円安は単純計算では貿易赤字の拡大を意味します。実際、現在ガソリン価格の上昇が目立つようになってきた要因のうち3分の1程度は円安で説明ができます。製造業にとって悲願だったはずの円安が、石油や天然ガスの購入代金の上昇をもたらしてしまうという悩ましい状況です。

原発を全く稼動させないときのリスクを考えておく

 このように、エネルギーの議論においては、産業側の視点が不可欠です。製造業の経営者であれば、そうしたことは容易に実感できるかもしれませんが、人口比で見れば経営者の割合は少ないですし、どうしても一般の社員、消費者にとって、産業側の視点の重要度はおろそかになりがちです。

 現在、我が国の政府は、なんとしても原発の再稼働を進めようとしているように見えます。その決定プロセスや、ストレステストの二次評価を待たないこと、周辺自治体の理解を得る必要があることを考えると、かなりの混乱が予想されます。

 しかし、私たち国民が現時点において全く、あるいはほとんど再稼働させないという選択をするのであれば、私が述べてきたような困難を(電力会社だけではなく)全体で引き受けるという覚悟が必要なのだと思います(この主張をただの脅しと受け取られるのであれば、仕方がありません)。そして、その状況を打開する方法を真剣に考え、場合によっては別のリスクやコストを負うことも辞さないという心積もりが必要ではないでしょうか。

 上述の問題提起は、短期的視点に立ったものです。冒頭に述べた長期的視点につながるものではありますが、同じではありません。長期的視点に立てば、選択肢の幅は広がるからです。次回からの連載では、引き続き長期的な化石燃料のリスクについて、そしてとり得る有効なオプションについて述べていきたいと思います。

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