スマートシティ 関連コラム

2012年10月11日

【決め手は位置情報】
[予測する]データの増加と精度向上で革命

河合 基伸、高橋 史忠=日経エレクトロニクス、Phil Keys=シリコンバレー支局
出典:日経エレクトロニクス 2011年3月7日号
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 水蒸気量の測定には、国土地理院が全国の約1200カ所に設置した電子基準点のGPS受信機を使う。30分ごとに取得した水蒸気量を「メソ数値予報」と呼ばれる日本周辺の数値予報モデルに入力し、1時間に1度の数値予報に活用している。メソ数値予報は、主に集中豪雨などの防災向け気象予報に利用されるモデルだ。

 今回の手法の導入前に気象庁が湿度を観測していた地点は全国で156カ所。水蒸気量の測定地は16カ所で、専用の観測装置をくくりつけた気球を上げて1日に2回測定していた。この地点が一気に約1200カ所に増え、正確な大気中の水蒸気量を高い頻度で取得できるようになった。これにより、数値予報の精度向上が期待できるという(図3)。

図3 GPSで数値予報の精度を向上
気象庁が導入した大気中の水蒸気量(可降水量)を使う予報の効果。①の可降水量を取り入れた予報は、可降水量を使わない②に比べ、実際に観測した降雨量に近いことが分かる。計測には国土地理院の電子基準点を使う。赤色やピンク色の地点ほど、降水量が多い。(画像:気象庁)

 実は、大気中の水蒸気はGPSでの測位誤差を大きくする元凶の一つになっている。水蒸気の影響で地上に届くGPS信号の電波に遅延が生じるからだ。今回取り入れた水蒸気量の測定は、それを逆手に取った手法である。複数の信号の遅れを比較することで、電子基準点の真上にある水蒸気の総量(可降水量)を算出する仕組みだ。

予測がより精緻に

 GPS衛星に搭載された原子時計は極めて小さな誤差があり、衛星ごとに時刻がばらつく。そのまま測定すると水蒸気量の誤差が大きくなるため、衛星間の時刻のズレを修正し、測定結果に反映する必要がある。開発に取り組んだ気象研究所 予報研究部の小司禎教氏は「時刻の同期手法にメドが立ったと同時に、過去の観測データに遡って初期値を求める数値予測モデルの導入によって実用化できた」と話す1)

参考文献 1) 小司ほか、「GPS気象学:GPS水蒸気情報システムの構築と気象学・測地学・水文学への応用に関する研究」、『測地学会誌』、Vol.55、No.1、pp.17─38、2009年.

 小司氏は「測位衛星の数が増加すれば、観測範囲が広がり、データを増やせる可能性がある」と、GPS気象の将来に期待を寄せる。2011年4月には、電子基準点の設置密度が低い東京都心の複数地点にGPS受信機を設置し、水蒸気量を測定する実験を始める。こうした取り組みが進むことで、ゲリラ豪雨などの予測が、より精緻なものになりそうだ。

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