Smart City Week 2012 会場速報

2012年10月31日

【SCW2012】「こころの再生と住民の帰還なしに街の再生はない」復興に学ぶまちづくり講演から

 「人のこころの再生と、避難せざるをえなかった住民たちの帰還なくして街の再生はない」――。巨大な災害に見舞われた都市のリーダーたちが示したキーワードは同じ。「Smart City Week 2012」で10月30日に開かれた国際会議「復興に学ぶまちづくり」において、米ニューオリンズ市のCIO(最高情報責任者)であるAllen Square Jr.氏と、福島県南相馬市の桜井勝延市長が登壇し、それぞれが被災後の現状や、被災によって知り得た都市の教訓を語った。

 ニューオリンズ市と南相馬市の共通点は、被災からの復興に立ち向かっていること。ニューオリンズ市は2005年8月に米国の南東部を襲った大型ハリケーン「Katrina」に遭遇。市の陸上部の面積の約8割が水没した。一方の南相馬市は東日本大震災と、それに伴う原発事故に見舞われた。約7万人の市民のうち、最大時には約6万人が市外へ避難した。

 Square氏は冒頭、Katrina以前からニューオリンズ市では市政が迷走し、財政悪化や情報基盤の未整備といった状況にあったことを打ち明けた(写真1)。2010年の市長交代を機に、復興と同時に市の財政と情報の両基盤の立て直しに注力してきたという。


写真1●情報基盤の整備を通じて、都市の課題解決に取り組む
米ニューオリンズ市のCIO(最高情報責任者)であるAllen Square Jr.氏

 復興においてSquare氏が強調したのは、被災によって住めなくなった家屋が荒廃した地域を生み出してしまう問題と、全米各地に避難したまま戻ってこない市民たちの問題。前者では、住人不在により税収へ影響がでたり犯罪の温床になったりし、「暮らしやすい街への復旧を阻む」(同氏)。

 後者は、経済力に影響を受けるため、より深刻だという。自力で避難先を見つけられず、身寄りのない街に避難先を割り振られたケースが多い。現地ですぐに職を求めて働き始めるため、生活の基盤ごと移っているために戻れないのだという。

 CIOであるSquare氏は、情報基盤の整備を通じて、これらの課題の解消を進めている。そこでは、「世界で最も復旧しやすい都市(To be the most resilient city in the world)」を目指す。そのために同氏は「世界中のさまざまな知見を生かしていくことと、自らの被災の経験を共有することに注力していく」と語った。

女性なしには医療・介護や小売りなどの社会インフラが復旧しない

 南相馬市の桜井市長が強調したのも、人のこころの再生、避難せざるをえなかった住民たちの帰還である(写真2)。同市では現在、4万5000人にまで人口が戻ってきている。その背景には、「行政機能を市内に維持したことと、独自の復興に向けた取り組み」(桜井市長)がある。


写真2●「復興とは、こころの再生だ」と訴える福島県南相馬市の桜井勝延市長

 しかし、避難先から戻ってくる住民の世代は高齢者に限られているという。「放射性物質の濃度ではなく、原子力発電所からの距離だけで避難命令地域に指定されたことで、放射性物質に対する恐怖感や不安が拭いきれない」(桜井市長)ためだ。特に、就学児を持つ家族の場合、父親だけが戻る“逆単身赴任”のケースが多い。女性が戻らないことで、医療機関や介護施設、小売店など女性の働き手が支える社会インフラの復旧が遅れているという。

 こうした状況を踏まえて、桜井市長は「復興とは、こころの再生だ」と強調する。「家族のきずな、街のきずなが体をなしていないなかで再生など実現しない」と指摘する。そのうえで、「復興には、日本全体の力を借りなければならない。国としての本気の姿を示せれば、世界からも支援の手が伸びるはずだ。そんな地域再生を実現したい」と訴えた。

(加藤 伸一=ジャーナリスト)

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